私のオフロード記

ロックセクションを制覇する:リフトアップとロングトラベルサスペンションの真価

Tags: サスペンション, リフトアップ, ロックセクション, 車両カスタム, 走行レポート, プラド

オフロード探検家の皆様、こんにちは。「私のオフロード記」編集部です。 今回は、筆者自身が経験したロックセクションへの挑戦と、その際に真価を発揮した愛車のカスタムについて、具体的な走行レポートをお届けします。オフロード走行における足回りの重要性、特にリフトアップとロングトラベルサスペンションがもたらす恩恵について、皆様の次なる探検や車両カスタムのヒントとなれば幸いです。

導入:難所攻略への意欲とカスタムの背景

今回のターゲットは、関東近郊に位置する某林道の奥深くに潜む、通称「牙の沢」と呼ばれるロックセクションです。大小さまざまな岩が複雑に入り組み、ライン取りを誤ればたちまちスタックしてしまう、ベテランオフローダーにとっても手強い難所として知られています。

私の愛車は、トヨタ ランドクルーザープラド(TRJ150W)をベースに、約3インチのリフトアップと、それに伴うロングトラベルサスペンションキットを組み込んでいます。具体的には、フロントにはKing Shocksのコイルオーバー、リアには同社のショックアブソーバーとHellwig製のヘルパースプリング、そして調整式ラテラルロッドとキャスター補正ブッシュを導入しました。このカスタムは、見た目の迫力だけでなく、特に過酷なオフロードでの路面追従性と安定性向上を目指したものです。今回はこのカスタムの真価を試すべく、「牙の沢」へ挑むことを決意しました。

本論:ロックセクション走行の全貌

1. アプローチから最初の難所へ

「牙の沢」へのアプローチは、比較的なだらかな林道から始まりますが、徐々に路面状況は悪化し、大きめの石や泥濘が現れ始めます。ここではまだ4Hで走行し、サスペンションのストロークを活かしながらスムーズに走り抜けます。本番のロックセクション手前で車両を停め、タイヤの空気圧を1.0kgf/cm²まで落とし、デフロックの準備も完了。精神統一し、いよいよ「牙の沢」へ進入しました。

セクションに入るとすぐ、車両は斜度のある岩盤と、その合間に堆積した砂利のミックス路面に遭遇します。最初の大きな岩を乗り越える際、リフトアップによる最低地上高の恩恵は歴然でした。通常であればアンダーフロアを擦るような状況でも、プラドは難なくクリアしていきます。しかし、続く連続した岩の段差では、純正サスペンションではすぐにタイヤが浮いてしまいそうな場面が続きます。

2. ロングトラベルサスの本領発揮:路面追従性

この「牙の沢」で最も印象的だったのは、ロングトラベルサスペンションの圧倒的な路面追従性です。左右のアクスルが互いに独立して大きく伸縮することで、どんなに複雑な岩の形状に対してもタイヤが路面を捉え続け、強力なトラクションを維持してくれました。

特に顕著だったのは、深いV字溝に差し掛かった時です。片側のタイヤが深く落ち込み、もう片側のタイヤが大きく持ち上げられるような状況でも、サスペンションがしっかりと伸び縮みし、4輪全てが地面に接地しようとします。これにより、車体の傾きが最小限に抑えられ、安定した姿勢で難所を乗り越えることができました。以前、純正サスで同様の場所を試した際には、すぐに片輪が浮いてしまい、車体が大きくロールして不安定になったことを思い出すと、その違いは明らかでした。

3. ライン取りと車両の挙動

ロックセクションにおけるライン取りは非常に重要ですが、このカスタムサスペンションは、その選択肢を格段に広げてくれました。タイヤが路面を捉え続けることで、よりアグレッシブなラインを選択できるようになったのです。

例えば、岩の頂上を跨ぐように進む際、左右のタイヤがそれぞれ異なる高さの岩を乗り越えます。この時、ロングトラベルサスは車軸のねじれ(アクスルアーティキュレーション)を最大化し、無理なく岩を「這い上がる」ような感覚で進めます。ステアリング操作も非常に素直で、岩にタイヤを当てる角度や、車体の向きを微調整する際のレスポンスが良好でした。これは、キャスター補正ブッシュがステアリングジオメトリーを適正に保っている恩恵も大きいと感じました。

一度、深くえぐれた岩の窪みに片輪が落ち込みかけた時、車両が一瞬バランスを崩しかけました。しかし、サスペンションが深く沈み込みながらも粘り強くタイヤを路面に押し付け、トラクションが失われることなく脱出できました。この瞬間、まさに「足で稼ぐ」という言葉を体感したような思いでした。もしここで接地性が失われていたら、デフロックを駆使しても簡単には抜け出せなかったかもしれません。

4. 課題と安全への配慮

もちろん、カスタムサスペンションがあればどんな場所でも楽々走破できるというわけではありません。例えば、今回のセクションでは、車幅ギリギリの狭い岩の間を抜ける際に、左右のロックスライダーが岩に接触する場面が何度かありました。リフトアップにより最低地上高は確保できましたが、車幅そのものは変わらないため、こうしたタイトな場所では慎重なライン取りとスポットする人の助けが不可欠です。

また、車両の挙動が安定しているとはいえ、決して無謀な運転は避けなければなりません。岩を乗り越える速度、アクセルワークの繊細さ、そして何よりも自分自身の判断力が試されます。環境保全の観点からも、必要以上に轍を深くしない、不用意な場所で空転させないといった配慮は常に心がけています。

まとめ:カスタムが拓くオフロードの可能性

今回の「牙の沢」挑戦を通して、リフトアップとロングトラベルサスペンションが、いかにロックセクションにおける走破性を高めるか、身をもって体験することができました。特に、タイヤの接地性を維持する能力と、それに伴う車体の安定感は、難所を安全かつ確実にクリアするための大きな武器となります。

今回の体験から得られた教訓は、単に車両を改造するだけでなく、その性能を最大限に引き出すためのドライビングテクニックと、状況判断能力が不可欠であるということです。そして、オフロード走行は常に危険と隣り合わせであり、事前の準備と無理をしない判断、そして仲間との協力がいかに重要であるかを再認識しました。

このレポートが、オフロード愛好家の皆様の車両カスタムや、次なる冒ロード探検への挑戦への刺激となれば幸いです。カスタムに興味がある方、具体的なサスペンションの選択で悩んでいる方がいらっしゃれば、ぜひコメントでご意見やご質問をお寄せください。安全で楽しいオフロードライフを共に追求していきましょう。